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スウェーデン語教師。スウェーデンの田舎生活で日々感じることを綴ります。

【移民社会スウェーデン】カリールは生きている

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先日新しい友達のカリールくんを食事に呼んだ。
うちに来るのは初めてだったので
ちょっとだけ緊張しているみたいだった。

カリールは、シリア出身。
2年前にスウェーデンに来た。
彼は、基本的に静かだけど、
話すときは決まって冗談を言おうとする。
あまりにクールな雰囲気だから、
冗談を言っているのかどうか
人に気づかれない時もある。
スウェーデンに来て日が浅いのに、
スウェーデン語の難しい単語や文法をよく知っていて、
間違いを恐れずに積極的に話す印象がある。

緊張していたカリールに
私も何を話したらいいのかわからなくて
そういうときに限って話題が思い浮かばなくて
何を話していたのかあんまり覚えていない。

彼の家族の話になったとき、
両親と兄弟姉妹はエジプトやリバノンなどに
散り散りになって住んでいて、
カリールはたった一人でスウェーデンに渡ったと知った。
カリールも、難民として居所を転々とする中で
ヨーロッパに渡ることを決意し、
密航業者に莫大な金額を払い、小さなゴムボートに乗った。
話すカリールの顔はこわばっていた。

彼の乗ったゴムボートは、陸にたどり着く前に沈んでしまう。
ボートから落ちたときに彼らは気づく。
密航業者から与えられたライフベストが
使い物にならないものだったことを。
だまされた。

100人を超える人が溺れ死ぬのを見ながら
カリールは必死に泳ぎ、陸に辿り着いた。

私はそういう話を聞くとき、
どういう反応をしたらいいのかわからない。
特に、今日も明日も何も起こらないという錯覚が
簡単にできてしまうような
暖かなリビングのソファーの上で
隣に座っている人の目は
私の見えない暗い宙を眺めている。

私は生まれてから一度も
着る服がなくなった経験がない。
食べ物を食べなかった日は一日もない。
住む場所がなくなったこともない。
大災害などで大きな被害にあったこともない。

なんと幸運なことだろう。

身体が強くてよかったね、
泳ぎ方を知ってて、よかったね、
なんていうことを、ぽつりと言うことくらいしか
できなかった。

「うん」
重くなった空気を察してか、
カリールが言った。「生きていることが嬉しい」
だいぶ悲しそうな笑顔だった。

話を変えたくて、
彼女とはうまくいってるか聞いたら
なんと彼女と別れたところだった。
私、ほんとごめん、と思った。
そんな話しかできんで。

来てくれてありがとう、
話してくれて、本当にありがとう、
と最後に伝えた。
またここに来てくれたらいいなと思う。

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