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スウェーデン語教師。スウェーデンの田舎生活で日々感じることを綴ります。

【移民社会スウェーデン】マディは国籍がない

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私のことが大好きな男の子がいる。
マディ、5才。

マディは本当に私のことが好きらしい。
私は彼の家に行くと必ず塩漬けのキュウリを食べる。
私が旅行でいなかった間、家族に
「食べちゃだめ。My(私)が明日来るかもしれない」
と毎日塩漬けのキュウリの瓶を抱きしめて
私が待っていたらしい。

彼の理論はいろいろ面白い。
塩漬けのキュウリにしても、
Myは塩漬けのキュウリが好きだ、
だから塩漬けのキュウリがあればMyは家に来る、
と思っているから、塩漬けのキュウリが
家にあることをいつも確認するらしい。
彼に初めて会ったとき、
彼は突然牛乳パックを一つ私の前に置いた。
僕は牛乳が好きだ、
僕はMyが好きだ、
だからMyは牛乳が好きに違いない、と考えたそうだ。

昨日はボール遊びをしていて、
私の足にボールが当たって「アイタ〜」と私が言ったら
はっとした顔で走ってクッキーの缶の蓋を取りに行き
ボールが当たったところをそよそよと扇いでくれた。
優しいマディ。

彼は、国籍がない。
彼の家族は、国籍がない。
彼のお母さんの家族は、お母さんが子どもの頃に
争いの続くアフガニスタンからイランに逃れた。
イランに逃れたアフガニスタン人は多い。
彼らはイランで歓迎されておらず、
イラン人と同等の権利を認められないらしい。
そして、アフガニスタン政府は
彼らを逃れた者として、自国民とは認めないらしい。

マディはイランで生まれた。
アフガニスタンは、見たことがない。
生まれた国も、家族の故郷の国も、
彼のような人たちの国籍を認めないから、
マディは国籍がない。

すでにスウェーデンに住む家族を頼って
こっちになんとか逃げてきた。
人をぎゅうぎゅうに載せたゴムボートで
ヨーロッパに渡って来るとき、
たくさんの人が、子どもが、
ボートから落ちて、亡くなった、
とマディのお母さんが言った。
マディのお母さんは、泳ぎ方を教えられたことがなかった。
私が泳げなければ、子どもたちを助けられない
と痛切に思ったから、
お母さんは今年移民向けの水泳教室に通って
努力の末にばた足ができるようになった。

彼の家族のイランでの生活状態は
あまりにひどかったよう。
これまでの栄養失調のため、
マディは身体がそんなに強くない。
歯が生えてくるのが人一倍遅く、
4才を過ぎてやっと生えてきた。
ちょっと何かするたびに「胸が痛いよ」と言う。
心臓にも少し問題があるらしい。

私たちがあるとき一緒に食事をしていたら、
マディがお母さんに
「こんなにいっぱい食べたら
明日のごはんがないんじゃないか」と聞いていた。

5才で、車のおもちゃに夢中のマディ。
自分はスパイダーマンだと言ってみせるマディ。

彼の家族は、難民申請中。
申請はまだ結果が出ていない。
申請を出した人全員が居住許可をもらえるわけではない。
家族をつたってきた難民の受け入れも、厳しくなった。
明日、もしかしたらスウェーデンにいてもいいよ、
もしくは自国に帰りなさい、と
移民局に言われるかもしれないし、言われないかもしれない。
帰らされるとしたら、
マディが一度も見たことのない、
書類上の「母国」、争いの続くアフガニスタン。

難民についての話は、難しい。
年末に、マディと遊べてよかった。

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